歯科医院が辞めた衛生士から残業代を請求されたら?未払いが生まれる3つの入口
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先月まで一緒に働いていた歯科衛生士から、内容証明郵便が届く。

差出人は代理人の弁護士で、内容は未払いの残業代の請求。

少人数で診療を回している院長にとって、これほど動揺する場面はありません。

しかも歯科医院には、未払いが静かに積み上がりやすい固有の事情があります。

この記事では、請求されるお金の中身と、歯科医院に特有の落とし穴、そして請求を受けた院長が最初にすべきことを整理します。

社会保険労務士・行政書士小笠原事務所

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1. 結論:ここだけ押さえる

✅さかのぼって請求できるのは、いまのところ3年分です。付加金と遅延利息が加わると、負担がもとの未払額の2倍を超えることがあります。

✅歯科医院で未払いが生まれる入口は、多くの場合「週44時間の特例」「昼の中抜け」「〇〇手当」のどれかです。

✅タイムカードがなくても、請求そのものはできます。記録を残していないことは、院長にとって不利に働きやすいのが実務です。

2. 未払残業代の請求では、何をいくら請求されるのか

請求書に書かれている金額は、残業代そのものだけではありません。

まず、何が積み上がっているのかを分けて見ます。

請求される3つのお金

1つ目は、割増賃金(残業・休日・深夜に働いた分の上乗せ賃金)です。


労働基準法第37条第1項は、法定労働時間(法律の上限。原則1日8時間・週40時間)を超えて働かせた場合や、休日に働かせた場合に、割増賃金を支払わなければならないと定めています。

上乗せの率は政令で決められており、次のとおりです。

働かせ方 上乗せの率 根拠
時間外労働 2割5分以上 労働基準法第37条第1項、平成6年政令第5号
法定休日
(法律上、必ず与えなければならない休日)の労働
3割5分以上 同上
深夜労働
(午後10時から午前5時まで)
2割5分以上 労働基準法第37条第4項
1か月60時間を超える時間外労働 5割以上 労働基準法第37条第1項ただし書

最後の「月60時間超で5割以上」は、以前は中小企業に猶予がありました。

この猶予は2023年4月1日に廃止されています。

歯科医院の規模でも例外ではありません。


なお、月60時間を超える時間外労働が深夜に及んだ場合、上乗せの率は5割と2割5分が重なり、7割5分以上になります。

夜間診療のある医院では、ここも確認が要ります。

また、労使協定(労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者と、会社が結ぶ書面の約束)を結べば、引き上げ分の2割5分を有給の休暇に振り替える「代替休暇」の制度もあります(労働基準法第37条第3項)。

過半数を代表する者は、投票や挙手などの民主的な方法で選ぶ必要があり、管理監督者はなれません(労働基準法施行規則第6条の2)。


2つ目は、付加金(裁判所が会社に、未払分と同額まで追加の支払を命じることがあるお金)です。


労働基準法第114条は、第37条などに違反した使用者(人を雇う側)に対し、裁判所が労働者の請求によって、未払金と同一額の付加金の支払を命ずることができると定めています。

必ず命じられるわけではありません。

付加金は判決で命じられるもので、労働審判の調停や訴訟上の和解では生じませんし、判決の前に未払分を支払えば命じられないのが通常の扱いです。

とはいえ、争って敗訴すれば、負担が実質的に2倍になりうるということです。


3つ目は、遅延利息です。


すでに退職した従業員の未払賃金(退職手当を除く)には、賃金の支払の確保等に関する法律第6条第1項と同法施行令第1条により、退職の日の翌日から年14.6パーセントの遅延利息がつきます。


ただし、この年14.6パーセントには例外があります。支払が遅れている賃金があるかどうかについて、合理的な理由により裁判所や労働委員会で争っている期間などには適用されません(同法第6条第2項、同法施行規則第6条第4号)。


もっとも、これは「争えば利息がつかなくなる」という意味ではありません。

外れるのは年14.6パーセントという上乗せだけで、その期間も民法の法定利率による遅延損害金は発生すると考えられます(民法第419条第1項、第404条)。

また、遅延利息の支払を免れることだけを目的に争っていると見られる場合には、この例外は認められないとされています(昭和51年9月28日基発第690号)。


在職中の期間については、民法第404条の法定利率が使われます。

この法定利率は年3パーセントで、2026年4月1日から2029年3月31日までの期間も年3パーセントとされています。

さかのぼれる期間は「当分の間3年」

労働基準法第115条は、賃金を請求できる権利は5年で消滅時効(一定の期間が過ぎると請求できなくなる仕組み)にかかると定めています。

ただし、附則(法令の末尾にある、施行日や特例を定めた部分)第143条第3項に経過措置(制度が変わるとき、当面の間だけ認められる特例)があり、当分の間は3年とされています。

退職手当だけは5年です。


同じ経過措置は、ほかの2つの期間にもかかっています。

項目条文上当分の間根拠
賃金請求権の消滅時効5年3年(退職手当は5年)労働基準法第115条、附則第143条第3項
付加金を請求できる期間5年3年労働基準法第114条ただし書、附則第143条第2項
賃金台帳などの保存期間5年3年労働基準法第109条、附則第143条第1項

たとえば、月8万円の未払いが3年分あったとします。

それだけで288万円です。

付加金が同額命じられれば576万円になり、さらに遅延利息が乗ります。

これで1人分です。同じ働き方をしていた職員が複数いれば、そのぶん増えます。


この「当分の間3年」は経過措置であり、条文どおりの5年になる可能性が指摘されています。そうなれば、さかのぼる期間はさらに伸びます。

3. 歯科医院ではどこが問題になるか

ここからが本題です。

歯科医院には、他の業種にはない未払いの入口があります。

週44時間の特例は、本当に自院に使えているか

特例措置対象事業場(週44時間まで認められる、業種と規模の要件を満たす事業場)という仕組みがあります。

労働基準法第40条を受けた労働基準法施行規則(法律の細かい部分を定めた命令)第25条の2第1項が根拠です。


この特例が使えるのは、労働基準法の別表第一(労働基準法の末尾にある、事業の種類の一覧表)の第8号、第10号(映画の製作の事業を除く)、第13号、第14号にあたる事業のうち、常時10人未満の労働者を使用するものです。

歯科医院は第13号「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業」にあたります。


この特例には、届出も申請も要りません。

手続がないぶん、「うちは週44時間でいいはずだ」と思い込んだまま、要件を確認していない医院が出てきます。

未払いが積み上がる最大の入口がここです。


確認することは4つあります。


 1つ目、常時10人未満かどうかを、事業場(本社・支店・店舗など、場所ごとの単位)ごとに数えます。

パート・アルバイト・非常勤も含めて数えます。

分院があれば、分院ごとに別々に判定します。


個人開業の場合、事業主である院長本人は労働者ではないため、数に入りません。

院長と同居している親族(配偶者や子など)も、原則として労働基準法上の労働者にはあたらず、人数に含めないのが原則です(労働基準法第116条第2項、昭和54年4月2日基発第153号)。

ただし、院長の指揮命令に従っていることが明確で、就労実態や賃金の決め方が他の職員と同じである場合などは、労働者として数えます。

医療法人の理事長など役員の扱いも実態で判断されるため、迷う場合は個別に確認してください。


なお「常時」とは常態としてという意味と解されており、一時的に10人になった月があるだけで直ちに外れるとは限りません。


 2つ目、常態として10人以上になった時点で、週の上限は40時間に戻ります。

衛生士や受付を増やした年から、週40時間を超えた分が時間外労働になっていた。

これが後から発覚するパターンです。

開業から年数がたち、職員が増えた医院ほど危険が高いといえます。


 3つ目、1日8時間の上限は特例でも変わりません。

施行規則第25条の2第1項は「一週間について四十四時間、一日について八時間まで」と定めています。

週の合計が44時間以内でも、1日9時間働かせた日があれば、その1時間は時間外労働です。


 4つ目、就業規則と雇用契約書で、週の所定労働時間(会社が決めた、働くことになっている時間)を44時間と定めているかを確認します。

ここが最も見落とされます。


この特例は、法定労働時間の上限が週44時間になるだけの制度です。

労働基準監督署への届出は要りませんが、社内の定めは別に必要です。

就業規則や雇用契約が「1日8時間・週40時間」のままであれば、週40時間を超えて44時間までの労働にも、労働契約にもとづく賃金を支払う義務が残ります。


この部分は法定労働時間の範囲内なので割増は不要です。

ただし1.0倍の賃金は払わなければならず、支払わなければ賃金の全額払い違反になります(労働基準法第24条)。

就業規則や賃金規程で「所定時間を超えた分は25パーセント増し」などと定めている場合は、その定めが優先します。

1.0倍はあくまで法律上の下限です。

なお、この部分は法定労働時間内なので、36協定は要りません。

社内の定めを直さないまま「特例事業場だから」と週44時間で働かせている医院が、最も多い未払いの型です。


 では就業規則を44時間に書き換えればよいのかというと、そこにも注意が要ります。

いま週40時間としている所定労働時間を44時間に延ばすことは、賃金が同額であれば労働条件の不利益変更にあたります。

就業規則を書き換えるだけで一方的に行うことはできません。

職員の合意を得るか、変更後の就業規則を周知したうえで変更に合理性があると認められる必要があります(労働契約法第9条・第10条)。

雇用契約書に週40時間と書いている職員については、個別の合意が要ります。


まずは、現状の定めと実際の勤務時間を突き合わせてください。

そのうえで、「定めを実態に合わせる」のか「実態を定めに合わせる(週40時間で運用する)」のかを決めるところから始めます。

職員が10人に近い医院では、後者のほうが結果的に安全なこともあります。

変形労働時間制と組み合わせると、特例が外れることがある

歯科医院では、平日は夜まで、土曜は午前だけ、というシフトを変形労働時間制(一定の期間を平均して1週間あたりの労働時間が法定労働時間の範囲に収まるなら、特定の日や週に法定労働時間を超えて働かせてよいとする仕組み。労使協定または就業規則で、対象期間と各日・各週の労働時間をあらかじめ決めておく必要があり、あとから忙しさに応じて変えることはできません)で組んでいることがあります。

ここに落とし穴があります。

組み合わせる制度週44時間の特例根拠
1か月以内の期間の変形労働時間制使える施行規則第25条の2第2項
フレックスタイム制(清算期間が1か月以内)使える施行規則第25条の2第3項
1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4)使えない(週40時間)施行規則第25条の2第4項
フレックスタイム制(清算期間が1か月超)使えない(週40時間)同上

施行規則第25条の2第4項は、これらの制度で働かせる場合には前の3つの項を適用しないと定めています。

つまり、1年単位の変形労働時間制を採用した時点で、週44時間という前提が崩れます。

「特例対象だから44時間」と「繁閑差があるから1年単位」を両方採ってしまうと、週40時間を超える部分がすべて未払いになります。


なお、1週間単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の5)は、小売業・旅館・料理店・飲食店で常時30人未満の事業場に限られており、歯科医院では採用できません(労働基準法施行規則第12条の5)。

この特例は、見直しが議論されている

厚生労働省の労働基準関係法制研究会は、2025年1月8日に報告書を公表しました。

この報告書では、特例措置対象事業場の解消が論点として取り上げられています。

その後、議論は労働政策審議会労働条件分科会に移りましたが、2025年12月26日、厚生労働大臣は2026年の通常国会への労働基準法改正案の提出を見送る旨を表明しました。


したがって、2026年9月時点で、この特例を廃止する法改正は成立しておらず、国会にも提出されていません。 

現行の労働基準法施行規則第25条の2は有効です。

今後の動きは注視が必要ですが、いま対応すべきは、現行のルールの下で要件を満たしているかどうかの確認です。

昼の中抜けは、休憩なのか手待ち時間なのか


歯科医院の多くは、昼に長い中抜けがあります。

ここが休憩として扱われているのか、それとも手待ち時間(作業はしていないが、呼ばれればすぐ動ける状態で待っている時間)なのかで、結論が変わります。


最高裁は、労働基準法上の労働時間について、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、その該当性は労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより客観的に定まると判示しています(三菱重工業長崎造船所事件・最高裁第一小法廷 平成12年3月9日判決、平成7年(オ)第2029号)。

就業規則に「休憩」と書いてあるかどうかでは決まりません。


さらに最高裁は、実際に作業をしていない時間であっても、労働契約上の役務の提供が義務づけられていると評価される場合には労働時間にあたる、と判断しています(大星ビル管理事件・最高裁第一小法廷 平成14年2月28日判決、平成9年(オ)第608号)。


これを歯科医院にあてはめると、次のような場面が問題になります。


✅昼の時間帯に、電話が鳴ったら出るよう指示している

✅急患が来たら対応するため、院内で待つよう伝えている

✅昼の間に器具の滅菌や片づけを済ませるよう求めている

✅外出は自由だと言っているが、実際には出られない状況が続いている


これらにあたる時間は、休憩ではなく労働時間と評価される可能性があります。

労働基準法第34条第3項は、休憩時間を自由に利用させなければならないと定めています。

中抜けが3時間あるつもりで組んだシフトが、実は労働時間だったとなれば、1日の労働時間が一気に増え、時間外労働が発生します。


なお、休憩は原則として事業場の全員に同じ時間帯に与えなければなりません(一斉付与。労働基準法第34条第2項)。

ただし、歯科医院が含まれる別表第一第13号の事業は、労働基準法第40条を受けた同法施行規則第31条により、この一斉付与の適用が除外されています。

交代で昼休みを取らせること自体は問題ありません。


問題になるのはそこではなく、その時間が本当に自由に使える休憩になっているかです。

交代で取らせる場合でも、労働時間が6時間を超えるなら45分以上、8時間を超えるなら1時間以上の休憩を、それぞれの職員に与える必要があります(労働基準法第34条第1項)。

「〇〇手当」は固定残業代として認められるか


「業務手当」「職務手当」を毎月払っているから残業代は払っている、という説明も見かけます。

これが固定残業代(あらかじめ一定額を残業代として毎月払う仕組み)として有効かどうかは、争点になりやすいところです。


参考になるのが、日本ケミカル事件(最高裁第一小法廷 平成30年7月19日判決、平成29年(受)第842号)です。

調剤薬局を運営する会社の薬剤師が、業務手当が固定残業代として有効かを争った事案です。


この判決をふまえ、実務では次の2点が押さえどころとされています。


✅通常の労働時間の賃金にあたる部分と、割増賃金にあたる部分とが判別できること

✅その手当が、時間外労働などの対価として支払われるものといえること。契約書の記載だけでなく、従業員への説明の内容や実際の勤務状況などの事情を考慮して判断されるとされています


そして、有効と認められた場合でも、実際に計算した割増賃金が手当の額を超えれば、その差額を支払う義務が残ります。

「手当を払っているから何時間残業させてもよい」という制度ではありません。


なお、この判決は、「手当を上回る残業代が発生していることを従業員がその場で把握して請求できる仕組みがなければ固定残業代とは認められない」とした二審の判断を、最高裁が誤りだとして差し戻したものです。

固定残業代が直ちに無効になるわけではない一方、有効性は個別の事情の総合判断によるため、あらかじめ整えておくことが重要という位置づけで読んでください。

4. 請求を受けたあと、院長がまず何をするか


支払いも反論もする前に、記録を集める

最初にやることは、金額の交渉ではなく事実の確認です。集めるものは次のとおりです。


✅出勤簿・タイムカード・シフト表・予約表

✅賃金台帳と給与明細の控え

✅雇用契約書・労働条件通知書 - 就業規則・賃金規程(作成している場合)

✅36協定(残業や休日労働をさせるために必要な労使協定)の写しと届出の控え


労働基準法第109条は、賃金台帳や労働関係に関する重要な書類の保存を義務づけています。

当分の間3年です。保存されていない場合、それ自体が法違反となるうえ、次に述べる不利益にもつながります。

記録がないと、どうなるのか


「タイムカードを置いていないから、労働時間は分からない」。


これは反論になりません。

使用者には、労働時間を適正に把握する責任があります。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日策定)は、始業・終業の時刻を使用者が確認し、記録することを求めています。

このガイドラインは、労働基準法第41条に定める管理監督者(経営者と一体的な立場にある人。役職名ではなく実態で決まる)やみなし労働時間制の対象者を、適用範囲から除いています。


ただし管理監督者についても、労働安全衛生法第66条の8の3により、事業者は面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法で労働時間の状況を把握しなければなりません。

「管理監督者だから記録は不要」にはならないということです。


  なお、「主任」「チーフ」といった役職をつければ管理監督者になる、というものではありません。

管理監督者にあたるかどうかは、経営方針への関与、採用や配置の権限、勤務時間の裁量、待遇といった実態で判断されます。

役職名では決まりません。

また、管理監督者にあたる場合でも、深夜割増賃金と年次有給休暇は別に必要です。

この論点は歯科医院で争いになりやすいため、別の記事で詳しく取り上げます。


記録がない場合、従業員側が出してくる手帳のメモ、業務用端末の記録、予約システムのログ、家族への連絡履歴などから労働時間が組み立てられていくことになります。

記録を残していないことは、院長を守ってくれません。

よくある誤解と実際


誤解:歯科医院はすべて週44時間まで働かせてよい

実際:常時10人未満の事業場に限られます。10人以上になれば週40時間です(施行規則第25条の2第1項)


誤解:10人未満なら、届出も社内の定めも要らない

実際:届出は要りませんが、就業規則・雇用契約で週の所定労働時間を44時間と定めていなければ、週40時間を超え44時間までの分にも賃金(割増は不要ですが1.0倍)の支払義務が残ります。44時間を超えた分は、これとは別に2割5分以上の割増が必要です


誤解:就業規則を44時間に書き換えれば済む

実際:週40時間から44時間への変更は労働条件の不利益変更にあたります。職員の合意か、変更の合理性が必要です(労働契約法第9条・第10条)


誤解:週44時間以内なら、1日10時間働かせてもよい

実際:1日8時間の上限は特例でも変わりません(施行規則第25条の2第1項)


誤解:1年単位の変形労働時間制と週44時間は併用できる

実際:併用できません。週40時間になります(施行規則第25条の2第4項)


誤解:昼の中抜けは休憩だから賃金は不要

実際:電話番や急患対応を指示していれば、労働時間と評価される可能性があります


誤解:交代で昼休みを取らせるには労使協定が必要だ

実際:歯科医院は休憩の一斉付与が適用除外なので、労使協定なしで交代させられます(施行規則第31条)


誤解:職務手当を払っているから残業代は済んでいる

実際:判別できることと対価性が必要です。超えた分の差額は別に支払義務が残ります


誤解:タイムカードがないので証明できないはず

実際:使用者に把握義務があります。記録がないことは院長の有利には働きません


誤解:退職して1年たったから、もう請求されない

実際:当分の間3年さかのぼれます(労働基準法第115条、附則第143条第3項)


誤解:36協定を出していないので、残業自体が無効だ

実際:36協定の有無にかかわらず、実際に働かせた時間の割増賃金の支払義務は生じます。あわせて、36協定の締結・届出がないまま時間外・休日労働をさせること自体が労働基準法第32条・第35条違反であり、罰則(同法第119条第1号)の対象です

5. まとめ

未払残業代の請求は、ある日突然やってくるように見えて、実際には何年もかけて積み上がったものが表に出てくるだけです。

歯科医院の場合、その入口は週44時間の特例、昼の中抜け、固定残業代の3つに集中しています。


いずれも、制度そのものは適法に使えるものです。

問題になるのは、要件を確認しないまま使っている場合と、記録を残していない場合の2つです。

ここを埋めるだけで、リスクは大きく下がります。


在職している職員がいる医院にとっては、まだ間に合います。

就業規則の所定労働時間の確認とシフトの点検、そして始業・終業時刻の記録から始めてください。



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